大判例

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大阪地方裁判所 昭和44年(ワ)820号 判決 1970年7月18日

原告

篠原信男

ほか二名

被告

大龍寺

ほか一名

主文

一、被告白木龍雄は、

(一)  原告篠原信男に対し金二〇九、九四六円および内金一八九、九四六四に対する昭和四三年五月二六日以降、内金二〇、〇〇〇円に対する昭和四四年三月一〇日以降、各完済まで年五分の割合による金員を支払え。

(二)  原告篠原洋子に対し金一八四、六〇〇円および内金一六六、六〇〇円に対する昭和四三年五月二六日以降、内金一八、〇〇〇円に対する昭和四四年三月一〇日以降、各完済まで年五分の割合による金員を支払え。

(三)  原告篠原仁に対し金五五、〇〇〇円および内金五〇、〇〇〇円に対する昭和四三年五月二六日以降、内金五、〇〇〇円に対する昭和四四年三月一〇日以降、各完済まで年五分の割合による金員を支払え。

二、原告らの被告白木龍雄に対するその余の請求および被告大龍寺に対する請求をいずれも棄却する。

三、訴訟費用はこれを二分し、その一を被告白木龍雄の、その余を原告らの各負担とする。

四、この判決第一項に限り仮に執行することができる。

事実

第一、請求の趣旨

被告両名は、各自、

(一)  原告篠原信男に対し金三四八、一五一円および内金三〇八、一五一円に対する昭和四三年五月二六日以降、内金四〇、〇〇〇円に対する訴状送達の翌日以降完済まで年五分の割合による金員を、

(二)  原告篠原洋子に対し金二三七、四〇〇円および内金二〇七、四〇〇円に対する昭和四三年五月二六日以降、内金三〇、〇〇〇円に対する訴状送達の翌日以降完済まで年五分の割合による金員を、

(三)  原告篠原仁に対し金一七〇、〇〇〇円および内金一五〇、〇〇〇円に対する昭和四三年五月二六日以降、内金二〇、〇〇〇円に対する訴状送達の翌日以降完済まで年五分の割合による金員を、

それぞれ支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。

との判決ならびに仮執行の宣言を求める。

第二、請求の趣旨に対する答弁

原告らの請求を棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

との判決を求める。

第三、請求の原因

一、事故発生

(一)  発生時 昭和四三年五月二六日午後五時三〇分頃

(二)  発生地 松原市上田町二九九番地

(三)  加害車 普通乗用自動車(大阪五は五七七七号)

運転者 被告白木龍雄

(四)  被害車 軽四輪貨物自動車(六大阪す八四六六号)

被害者 原告信男(運転中)

原告洋子(同乗中)

(五)  態様

原告信男運転の被害車が事故現場で信号待ちのため停車していたところへ、被告白木運転の加害車が追突したもの

(六)  傷害

原告信男

外傷性頸部椎過伸展障害

入院、昭和四三年五月二七日より同年六月七日まで(一二日間)

通院、同年五月二六日および同年六月八日より同年八月二日まで(五五日間)

原告洋子

脳震盪性、外傷性頸椎過伸展障害

入院、同年五月二八日より同年六月一〇日まで(一四日間)

通院、同年五月二六日、二七日および同年六月一一日より同年八月二日まで(五三日間)

原告仁

頸部外傷単純型、左下肢打撲

入院、同年五月二九日より同年六月五日まで(八日間)

通院、同年五月二六日、二七日および同年六月六日より同年八月二日まで(五八日間)

二、責任原因

被告らは、それぞれ次の理由により、本件事故により生じた原告らの損害を賠償する責任がある。

(一)  被告大龍寺は、代表役員である被告白木をして、加害車を檀家参りなどの業務用に使用させ、自己のため運行の用に供していたものであるから、自賠法第三条による責任。

(二)  被告白木は、事故発生につき、次のような過失があつたので、不法行為者として、民法第七〇九条による責任。

前方不注意、徐行一時停止怠る、ハンドル・ブレーキ操作不適当。

三、損害

(一)  原告信男

1 治療費 金四、三八一円

2 付添費、交通費 金三〇、〇〇〇円

3 休業損害 金二三、七七〇円

昭和四三年五月二七日より同年六月一〇日まで(一二日間)

4 慰謝料 金二五〇、〇〇〇円

前記入通院を要する傷害を受けた上に、現に頭重、右肩凝りなどの後遺症が残つた。その程度は労災保険等級一四級にあたる。

5 弁護士費用 金四〇、〇〇〇円

(二)  原告洋子

1 休業損害 金七、四〇〇円

昭和四三年五月二六日より同年六月二四日まで

2 慰謝料 金二〇〇、〇〇〇円

前記入通院を要する傷害を受けた上に、現に頭部痛、右上腕痛、肩胛骨中央部圧痛などの後遺症が残つた。その程度は労災保険等級一四級にあたる。

3 弁護士費用 金三〇、〇〇〇円

(三)  原告仁

1 慰謝料 金一五〇、〇〇〇円

2 弁護士費用 金二〇、〇〇〇円

四、よつて原告らは被告らに対し請求の趣旨記載どおりの判決を求める。

第四、請求の原因に対する答弁

一、被告大龍寺

請求原因第一項(一)ないし(四)の事実を認めるが、第二項(一)の事実を否認し、その余の事実は全部不知。

二、被告白木

請求原因第一項中、(一)ないし(五)の事実を認め、(六)の事実は不知、同第三項についてはこれを争う。

第五、証拠関係〔略〕

理由

第一、請求原因第一項中、(一)ないし(四)の事実は当事者間に争いがなく、同(五)の事実は被告白木龍雄との間で争いがない。そして〔証拠略〕によれば、同(五)の事実が認められ、〔証拠略〕によれば、原告ら三名が本件事故により受傷し、その傷害の内容、程度は請求原因第一項(六)記載どおりである事実が認められ、右各認定に反する証拠はない。

第二、責任原因

一、被告大龍寺の責任について。

(一)  〔証拠略〕によれば、被告白木龍雄は昭和二五年頃朝日新聞社に入社し、本件事故当時朝日新聞大阪本社連絡部次長であつたが、被告白木の先代が被告大龍寺の住職であつたため、同二六年頃先代が死亡した後、世襲的に大龍寺の住職を継いで、宗教法人大龍寺の代表社員となつていたこと、しかし大龍寺は同二五年頃には信徒代表も解散し、その後は壇家もなく、宗教活動をしていない状態で、ただ同寺境内の墓地を管理する程度であつたこと、本件加害車は被告白木の妻和子がその実家より贈与を受けた資産で購入し、右白木和子名義で登録されてあり、これを被告白木が会社への通勤や私用に使用していたこと、本件事故当日、被告白木住居地の近隣の妙徳寺で住職の寄り合いがあり、従前より、被告白木において、新聞社勤務の都合や大龍寺が宗教活動をしていなかつたことからほとんどこれに参加していなかつたが、右妙徳寺の住職より「たまには挨拶に来たらどうか」などと誘われ、当日は日曜日で在宅していたため、被告白木は、加害車を運転して妙徳寺に赴いて住職の寄り合いに加わり、飲酒した後、堺市浜寺の妻の実家に立寄ろうと更に加害車を運転して同寺を出て進行中本件事故を惹起したものであること、がそれぞれ認められ、〔証拠略〕によるも右認定を覆えすに足りず、他に右認定を左右する証拠はない。

(二)  右事実によれば、加害車の運行が、被告大龍寺の業務のために使用されたものと認めることは困難であり、他にこれを認めるに足る証拠のない本件においては、被告大龍寺は加害車の運行供用者であるということはできない。そうならば、被告大龍寺に対し自賠法第三条により賠償を求める原告らの本訴請求は失当であり棄却を免れない。

二、被告白木の責任について。

〔証拠略〕によれば、原告主張どおり(請求原因二の(二))、加害者の運転者である被告白木が、前方に対する注意を欠き、交通停滞していた事故現場で、先行する被害車が停止したのに発進したものと見誤り、追突するに至つたものである事実が認められ、右認定に反する証拠はないので、これによれば、被告白木に運転上の過失の存したことは明らかであり、被告白木は、不法行為者として、原告らに生じた損害を賠償する責任がある。

第三、損害

一、原告信男

(一)  治療費 金四、三八一円

〔証拠略〕による。

(二)  付添費 金一六、〇〇〇円

〔証拠略〕によれば、本件事故により、原告三名が同時に奈良県立医科大学付属病院に入院し、昭和四三年五月二九日より同年六月五日までの八日間は付添看護を必要とし、原告信男および原告洋子のそれぞれ母親二名に付添つてもらつたことが認められる。そして、幼児を含んだ原告ら一家全員が入院した状態では二名の付添いも当然であり、又近親者の付添いとして一日金一、〇〇〇円の付添費を要することが経験則上明らかであるから、従つて付添費は金一六、〇〇〇円となる。原告篠原信男本人は付添費等として金三〇、〇〇〇円を支払つたと供述するが、たとえそうであつたとしても、右認定を超える部分は本件事故と相当因果関係ある損害とは認め難い。

(三)  休業損害 金一九、五六九円

〔証拠略〕によれば、同原告は訴外吉崎紙器株式会社営業部に勤務していたが、本件事故により、休業期間が一二日間、収入が月収平均金四八、九一四円であつた事実が認められるので、その間の休業による損害は金一九、五六五円となる。

(四)  慰謝料 金一五〇、〇〇〇円

〔証拠略〕によれば、同原告は前記認定の入、通院(但し実通院日数は三日)を要する傷害を受け、更に頭重、右肩凝りなど局部に神経症状を残す後遺症の存する(甲第三号証の二)ことが認められるので、その他本件に顕れた一切の事情を考慮して、慰謝料を金一五〇、〇〇〇円とするのを相当と認める。

(五)  弁護士費用 金二〇、〇〇〇円

本件事故と相当因果関係ある損害として被告に賠償を求めうる弁護士費用は金二〇、〇〇〇円とするのを相当と認める。

二、原告洋子

(一)  休業損害 金六、六〇〇円

〔証拠略〕によれば、同原告は訴外吉崎紙器株式会社に賄婦として稼働していたが、本件事故により昭和四三年五月二七日から同年六月二三日まで二二日間休業を余儀なくされたこと、収入は日給金三〇〇円であつた事実が認められるので、その間休業による損害は金六、六〇〇円となる。

(二)  慰謝料 金一六〇、〇〇〇円

〔証拠略〕によれば、同原告は、前記認定の入、通院(但し実通院日数は四日)を要する傷害を受け、更に項部痛、右上腕痛、肩胛骨中央部圧痛など局部に神経症状を残す後遺症の存する(甲第六号証の二)ことが認められ、その他本件に顕れた一切の事情を考慮して、慰謝料を金一六〇、〇〇〇円とするのを相当と認める。

(三)  弁護士費用 金一八、〇〇〇円

本件事故と相当因果関係のある損害として被告に賠償を求めうる弁護士費用を金一八、〇〇〇円とするのを相当と認める。

三、原告仁

(一)  慰謝料 金五〇、〇〇〇円

前記認定の入、通院期間(但し実通院日数は四日間)その他本件に顕れた一切の事情を考慮して、慰謝料を金五〇、〇〇〇円とするを相当と認める。

(二)  弁護士費用 金五、〇〇〇円

本件事故と相当因果関係ある損害として被告に賠償を求めうる弁護士費用は金五、〇〇〇円とするを相当と認める。

第四、以上によれば、被告白木龍雄は、原告信男に対し、金二〇九、九四六円および弁護士費用を除いた内金一八九、九四六円に対する不法行為の日である昭和四三年五月二六日以降、弁護士費用である内金二〇、〇〇〇円に対する本件訴状が被告に送達された日の翌日であること記録上明らかな昭和四四年三月一〇日以降、各完済まで民事法定利息年五分の割合による遅延損害金の支払義務があり、原告洋子に対し、金一八四、六〇〇円および前同様の内金一六六、六〇〇円に対する昭和四三年五月二六日以降、内金一八、〇〇〇円に対する昭和四四年三月一〇日以降、各完済まで前同様の損害金の支払義務があり、原告仁に対し、金五五、〇〇〇円および前同様の内金五〇、〇〇〇円に対する昭和四三年五月二六日以降、内金五、〇〇〇円に対する昭和四四年三月一〇日以降、各完済まで前同様の損害金の支払義務があるので、原告の被告白木に対する本訴請求を右の限度で正当として認容し、その余および被告大龍寺に対する請求をいずれも失当として棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九二条、第九三条を、仮執行の宣言につき同法第一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 吉崎直弥)

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